はじめに
みなさん、こんにちは。飯島尚憲(Hisanori Iijima)です。
今回も、認知言語学に関する知識を、みなさまにご紹介したいと思います。
今回は「フレーム意味論」(Frame Semantics)という考え方です。
みなさんの頭に特定の言葉を思い浮かべてみてください。例えば「東京」とか。
その言葉について、いろいろとイメージが浮かんできていると思います。
ボクは「窮屈な街」というイメージが思い浮かびます。
そんな「周辺部的な知識」と「単語の意味」についての関連について学んでいきましょう!
フレーム意味論とは?
フレーム意味論は、過去数十年にわたって認知言語学で大きな支持を得てきた「意味」についての理論です。
チャールズ・J・フィルモア(Charles J. Fillmore)により開発された「フレーム意味論」は、単語の意味は「フレーム」として知られる知識の構造化された枠組みとの関係で理解されると仮定しています(Fillmore, 1982)。
本稿では、フレーム意味論の核となる概念を探ります。また、構文文法や身体化認知など、この理論から生まれた周辺領域についても掘り下げていきます。
フレーム意味論の基本
フレーム意味論の核心は、言葉の意味は孤立した実体ではなく、私たちの認知構造に深く埋め込まれているという主張です。
これらの構造(フレーム)は、私たちの経験、文化的背景、世界に対する理解に基づいています。例えば、「レストラン」という言葉は、客、ウェイター、メニュー、食べ物、お金を払う行為といった要素を含むフレームを想起させます。これらの要素はそれぞれ、私たちが「レストラン」という言葉を理解する上で役割を果たしているのです(Fillmore, 1976)。
フレームは物理的な存在に限らず、抽象的な概念や出来事、社会的な状況も含みます。例えば、「復讐」という言葉は、加害者、悪者、報復行為、正義感や満足感を含むフレームを呼び起こすとしています(Fillmore, 1982)。
構文文法(Construction Grammar)
フレーム意味論から生まれた最も重要な発展のひとつに、構文文法(Construction Grammar)があります。この文法アプローチは、形式と意味のペアである構文の役割を強調します(Goldberg, 1995)。
構文文法では、文の意味は個々の単語だけでなく、その単語が出現する構文構造によっても決まります。
例えば、”She sneezed the foam off the cappuccino” (Goldberg, 1995)という文は、”caused-motion “(原因と言動)という構文によって理解されます。この構文では、”くしゃみ “という動詞が通常、運動を引き起こすという意味とは結びつかないにもかかわらず、この文を解釈することができます。
身体化された認知(Embodied Cognition)
フレーム意味論は、認知プロセスの形成における身体と身体経験の役割を強調する身体化認知の発展にも影響を与えました(Lakoff & Johnson, 1999)。この考え方によると、私たちの概念の理解は、世界に対する感覚的・運動的な経験に基づきます。
例えば、「LOVE IS A JOURNEY」(Lakoff & Johnson, 1980)という概念メタファーは、道、目的地、仲間を伴う旅という身体的経験に根ざしています。このフレームワークを愛という抽象的な概念にマッピングすることで、私たちは「私たちは岐路に立たされている」「私たちは別々の方向に進んでいる」といった言葉を使って人間関係を理解し、語ることができるのです。
結論
フレーム意味論は、言語と認知における意味の複雑な性質を理解するための貴重な枠組みを提供してきました。言葉や概念の理解を形成する上で、構造化された知識や経験が果たす役割を強調することで、フレーム意味論は認知言語学の研究に新たな道を開きました。その影響は、構成文法や身体化認知の発展にも見ることができ、言語、心、身体の関係の理解をさらに豊かにしています。
参考文献
- Fillmore, C. J. (1976). Frame semantics and the nature of language. Annals of the New York Academy of Sciences, 280(1), 20-32.
- Fillmore, C. J. (1982). Frame semantics. In Linguistics in the Morning Calm (pp. 111-137). Hanshin Publishing Co.
- Goldberg, A. E. (1995). Constructions: A construction grammar approach to argument structure. University of Chicago Press.
- Lakoff, G., & Johnson, M. (1980). Metaphors we live by. University of Chicago Press.
- Lakoff, G., & Johnson, M. (1999). Philosophy in the flesh: The embodied mind and its challenge to western thought. Basic Books.